共用サーバーの基礎知識
共用サーバーとは、一般的に1つのWebサーバーに対し、CPUやメモリ、サーバーOSやアプリケーション、HDD・SSDのハードウェアリソースを複数人でシェアするサーバーのことを言います。また、「レンタルサーバー」「ホスティングサーバー」とも呼ばれます。
1つのWebサーバーをシェアするため、基本的には他のサーバータイプ(VPS、専用サーバー、クラウドサーバー)の中で一番価格帯が安く、最も自由度が低いサーバーとなります。
SEOに与える影響
共用サーバーがSEOに与える影響としては「ウェブサイト・ウェブページの読み込みスピードとの関係性(サーバーの応答時間)」が一番に挙げられます。
さらに、現在のSEOはコンテンツ品質を軸とする、ウェブサイトの速度や「モバイルフレンドリー」をGoogleは重要視しています。
モバイル検索を対象にした「スピードアップデート」が行われたことや、今後ランキング要因となる「コアウェブバイタル(Core Web Vitals)」のページの読み込み時間:LCP(Largest Contentful Paint)などの指標もあります。
また、ウェブサイト・ウェブページのスピードは、利用しているサーバーのみが原因ではないことが多く、例えばスペックが高い共用サーバーを利用したとしても、スピードが確実に向上するとは限りません。
現時点であれば、極端に遅いページの回避が出来ればSEOに与える影響は少ないと考えられますが、コアウェブバイタル(Core Web Vitals)が2021年5月にリリースされることが予定されているため、共用サーバーのサーバーの応答時間等は重視する必要があると言えます。
他と共用することでのSEOの影響
2020年9月に公開された、「LONG TERM SHARED HOSTING EXPERIMENT(長期共有ホスティング実験)」では以下のようなことが述べられています。
この実験の結果は、安価な共有ホスティング(共用サーバー・レンタルサーバー)が、実際に低品質でスパムの可能性のあるウェブサイトと一緒にホストされている場合、すべてのウェブサイトが監視されている場合、実際にホストされているウェブサイトのオーガニックパフォーマンスとランキングに悪影響を与える可能性があることを示唆しています。
米国でSEOブログを運営するバリー・シュワルツ氏の見解によると、この実験で低品質・スパム性のある近隣のサイトでの安価な共有ホスティングは、実際にGoogleのランキングに影響を与える可能性があると述べています。
しかし、Googleのジョン・ミューラー氏はこの研究に異議を唱え。以下のようにそれは実際には真実ではなく、Googleではそのように機能しないと説明しています。
つまり、「低品質のウェブサイトが多数ある共用サーバーはSEO・ランキングに影響がない」という結論となり、「他のウェブサイトと多く共用する共用サーバーを利用しても、SEOに関係がない」ということになります。
Googleの回答
以下のTwitterでは、長期共有ホスティング実験での意見が交わされています。
要点をまとめると、
- 人工的なサイトは、通常Google検索で特定の効果を示すことはほとんどないということ
- AWS(Amazon Web Services)も共用ホスティング(レンタルサーバー)に入るという認識を持っていること
- IPを考慮に入れるランキングアルゴリズムは知らない(Google検索には存在しない)ということ
- (低品質でスパムの可能性のあるウェブサイトと)同じIPアドレスですばらしいサイトがあること
- 優れた/高速/安定したサイトを作ることはランキングに反映されますが、ランキングが主な理由ではないこと
などの見解が伝えられています。
「とにかく共有ホスティングとは何か」の技術的側面は別としたとしたら、例えばAWS(Amazon Web Services)も共有ホスティングです。
このようなIPを考慮に入れるランキングアルゴリズムについて、私は知りません。 Bloggerを見てください。ホストされているすばらしいサイトがあり(ページ上の制限などを無視して)、そこにホストされている恐ろしいサイトがあります。すべて同じインフラストラクチャ、同じIPアドレスです。
安価なホスティングよりも優れたホスティングを選ぶ理由はたくさんあります。ユーザーを満足させる、優れた/高速/安定したサイトを作ることはランキングに反映されますが、ランキングが主な理由ではありません。
SEOに最良の共用サーバー選択法
どのようなスペックがSEOに最良の共用サーバーなのかを説明していきます。
独自ドメインが設定できること
安価なレンタルサーバー会社や選択するプランによっては「独自ドメイン」が設定できない場合があるので、注意してください。
SEOを継続的に行っていくのであれば、独自ドメインが最適だと言え、サブドメインよりもルートドメインを利用したサブディレクトリの方がSEOの観点から優先されます。
そのため、独自ドメインが設定できることは必須条件です。
ディスク容量に不安がないこと
ディスク容量とは、共用サーバー内で利用者が使えるスペースを表しており、「GB(ギガバイト)」や「MG(メガバイト)」で表示されている場合が多いです。
ディスク容量が足りなくなった場合、サーバーのパフォーマンスが低下し、最悪の場合シャットダウンする可能性があります。
アイデアマンズ株式会社がGoogle Lighthouseを利用した定点観測結果によると、ウェブサイトの1ページの容量は平均で2.43MBとなります。
そのため、以下を参考にしてください。
- 100ページの場合の容量:243MB(0.24GB)
- 1,000ページの場合の容量:2430MG(2.43GB)
- 10,000ページの場合の容量:24300MB(24.3GB)
1万ページあった場合でも24.3GBのディスク容量で収まるため、100GBや200GBもいらないと考える場合が多いですが、メールサーバーと共有して利用する場合や、複数のウェブサイトを運用する場合、画像を多く利用する場合などは、余裕を持った容量を選択しましょう。
ディスク容量が増えるほど、共用サーバーの月額費用が上がる傾向にあるため、お勧めは100GB以上を選択することです。
SSDを搭載しているか確認すること
今までは、HDD(ハードディスクドライブ)を利用されていましたが、HDDと比較してSSD(ソリッドステートドライブ)は処理速度・耐久性などに優れており、読み書きの速度(処理速度)が速く、表示速度は約3倍の違いがあります。
共用サーバーの値段が高くなる可能性がありますが、SSDが支流になりつつあるため、現在では比較的低価格でSSD搭載の共用サーバーも増えています。
高速なウェブサーバーソフトウェアを選択すること
「Webサーバーソフトウェア」は、インターネットを利用し、Webページを見る場合に、Webブラウザを通じてWebサーバーに「要求」を出し、それに対して「応答(レスポンス)」を返すプログラムのことを言います。
主に共用サーバーでは、Apache(アパッチ)、nginx(エンジンエックス)、LiteSpeed(ライトスピード)などがありそれぞれ特徴があり、nginx、又はLiteSpeedを推奨します。
WordPressを利用する場合は専用のキャッシュプラグインがあるLiteSpeedがお勧めです。また、大量の同時アクセスの処理に最適化され、静的コンテンツの配信に特化したnginxを選択しても良いです。
HTTP/2のサポートを確認すること
「HTTP/2」は2015年に公開されたHTTP/1.1の最新バージョンであり、「複数のリクエストを同時に処理することができる」ため、ウェブページの読み込み速度が向上する(クロールが効率化する)特徴があります。また、Googleでも2020年11月からHTTP/2を介して一部クロールを開始しています。
そのため、共用サーバーを選択する場合は極力「HTTP/2 あり」や「HTTP/2対応」の共用サーバーを選択することを推奨します。
1日の転送量に不安がないこと
共用サーバーの1日の「データ転送量」は決まっている場合が多いと言えます。
データ転送量を超えた場合、(各共用サーバー会社によって異なりますが)ページにユーザーがアクセスしにくくなる可能性があるため、SEOの不利益を被る可能性があります。
また、サーバーからの警告やプランの見直しを告げられるケースもあります。
目安としてウェブページ1ページのファイルサイズは2.43MBのため(Google推奨は1.6MB)、月間100万PVを目指す場合は1日約80GB(月間約2,400GB)の転送量が必要です。
転送量は共用サーバーのスペック表に記載がない場合もあるので、注意して確認してください。
SSLサーバー証明書の設定を確認すること
ウェブサイトを「HTTPS」化(常時SSL化)することでSEOの恩恵を受けることが出来ますが「SSLサーバー証明書」は年単位で費用が掛かり、ドメインよりも高くなります。
そのため、無料のSSLサーバー証明書(Let’s Encrypt / レッツ・エンクリプト)の設定が出来る共用サーバーを選択しましょう。
無料ですが、一般的に販売されているSSL証明書とは暗号強度に違いはなくSEOの恩恵を受けることが可能です。
バックアップ体制とRAIDレベルを確認すること
サーバーのトラブルで一番怖いことは、サーバー内のデータが消失してしまうことです。
(滅多に起こることはありません。WordPressを利用し「All-in-One WP Migration」プラグインなどで独自で復元することが出来るスキルがあれば、問題ないと言えます。)
- 共用サーバーのバックアップ体制・復元体制、それらにかかる金額の確認
- RAID(レイド)レベルの確認
以上を行っておきましょう。
RAID(レイド)は、ハードディスクが故障した場合でもデータ復旧・アクセス可能であり、安全性を担保することが出来る技術です。
しかし、RAIDレベル(モード)は複数あり、
- RAID1(ミラーリング)
- RAID6(ダブルパリティレイド)
- RAID10(ミラーリング+ストライピング)
- RAID50(分散パリティ+ストライピング)
いずれかのRAIDレベルを選択するようにしましょう。また、RAIDは負荷分散を分散することにより、処理速度が向上する可能性があります。
補足:WordPressを利用する場合
WordPressを利用し、サーバーの知識があれば、超高速CMS実行環境「KUSANAGI」の選択も視野に入れることをお勧めします。
KUSANAGIとは、プライム・ストラテジー株式会社が開発した高速のCMS実行環境で、WordPressが超高速に動作するWebサイト環境の仮想マシンの名称で、とても高速です。
しかし、共用サーバーでは「エックスサーバー」「カゴヤのWordPress専用サーバー」の2社みが対応しており、値段は他社より高いです。(専用サーバーでは「CPI root権限付専用サーバー」、VPSでは「Conoha VPS」が該当します。)
そのため、サーバーの知識等がある方は検討してみてください。
※エックスサーバーはインストールが不必要です。